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一世紀以上も前、日本は日露戦争を機に大陸進出の基地を中国の東北部に築きました。1932年に「満洲国」が成立してから、当地へ移住する日本人が飛躍的に増え、1945年の敗戦時に155万人もいたと言われています。このうちの27万人以上は、国策の下で「満蒙開拓団」として辺鄙な山村に入植した人々でした。敗戦時の混乱のなかで、多くの貴い命が奪われました。九死に一生を得た者は、女性や子どもを中心に中国に取り残されました。「中国残留日本人(孤児、婦人、邦人など)」と呼ばれる人たちです。わたしもその一員でした。

わたしたちは長年にわたり、祖国日本への帰還を夢見ながらも果たせず、ようやく帰国ができたのは戦後四十余年も経った後でした。そのため中国帰国者の多くは不安定な生活を余儀なくされました。こうした問題を解決するために、わたしたちは2001年頃から国の責任を追及する集団訴訟を起こしました。そして、六年近くに及ぶ努力と、各界の支援を受けて、ようやく新しい支援策を勝ち取ることができました。
本会は、集団訴訟の終結を機に原告団を母体に誕生しました。裁判を取り組むなかで培った団結や互助の精神を引き継ぎ、発展させ、高齢化へ向かう帰国者たちが健やかで尊厳のある晩年を送ることができるよう、必要な支援をおこなっていきます。また、帰国者問題の歴史や経験を次世代に伝え、日中両国の相互理解や友好の促進に貢献することを目的とします。

本会は、とり組む課題として、帰国者の抱える人権問題(不当差別の撤廃)、教育問題
(識字や日本語教育など)、医療・介護問題(医療・介護施設との連携など)、二世三世の就職問題(雇用促進など)などです。さらに日中両国間の文化交流や友好活動にも積極的に関わっていく所存です。
本会は、弁護士やボランティアをはじめ社会各方面に支えられながら、世代に跨る帰国者自身が主体となって運営する組織であり、帰国者なら誰でも気やすく活動に参加し、帰国者にとって心のふるさととなるよう目指しています(事務所の看板に「中国残留孤児の家」とあります)。

中国帰国者とその家族たちは、日中両国で幾多の労苦に苛まれながらも、力強く、けなげに生きてきました。人生の甘苦辛酸をなめ尽くしたからこそ、わたしたちは人間性の偉大さや尊さをこころえ、友愛精神や正義感を体得し、そして平和主義に共鳴できます。心の豊かさが失われ、価値観が崩壊したとも言われる現代の日本社会で、わたしたち帰国者は自信と誇りを持って、特殊な人生経験を活かして、互いに助け合いながら、育ててくれた日中両国の平和友好のために、これからも力を尽くしていきたいと願っています。
どうぞご支援ご協力のほどよろしくお願い申しあげます。

NPO法人 中国帰国者・日中友好の会 理事長
池田澄江